素敵に生きよう Vol.21(2003年1月号広報掲載)
「人権」ってもっと身近なもの
皆さんは「人権」と聞いてどう感じますか?
「難しい」とか「ややこしそう」、あるいは「自分には関係ない」と思う人もいるかも知れません。でも、本当にそうなのでしょうか。
例えば、正当な理由もなく、「衣・食・住」を満たされず、意思や感情も抑圧されている状態を想像してみてください。住むところもなく、空腹で寒さに震え、自由にできずにいるとしたら、生きていく気力さえ失うかもしれません。このような状態で、“ひと”として生きているといえるでしょうか。
「人権」とは、「生命・自由・身体の安全」に対する権利であり、言い換えると、人が“ひと”として生きていくのになくてはならないもの、また、なくては生きていけないものなのです。こう考えれば「人権」というものが、身近に感じられるはずです。
今なお残る悲惨な差別
昨年の11月末に「ひゅーまんフェスタ」の催しのひとつとして、「インドのダリット差別」のパネル展を市役所の市民ロビーで開催しました。“ダリット”というのはサンスクリット語で「抑圧された人々」を意味しています。
“ダリット”は、インドに依然として残るカースト制度といわれる身分制度のもと、カーストのどの階級にも属すことのできない「不可触民」と呼ばれる人々で、1億6千万人いるといわれています。彼らはその出生を理由に、今なお住居を隔離され、上位のカーストが住む場所に立ち入ることもできず、また特に女性たちには悲惨な暴力が振るわれるなど、さまざまな差別、人権侵害、殺人を含む残虐行為が起こっています。
このような状況の中、国連は、2001年8月31日から9月8日まで、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」をダーバン(南アフリカ共和国)で開催しました。現在、世界各国で民族・種族紛争が多発し、内戦にまで及んでいるなか、この世界会議はとても大切な意義を持つものでした。この世界会議では、今なお存在する人種や民族、さらには過去の身分を理由とした差別などが取り上げられ、これらの差別撤廃の重要性と解決に向けた「宣言」と「行動計画」が採択されました。
これにより、世界の人権に対する方向性が再確認されました。
個性や違いを大切に
その一方で、私たちが住んでいる日本を振り返ってみると、いまださまざまな人権侵害があとを絶ちません。生まれたところが被差別部落である、障害を持っている、外国人である、女性だから、男性だから…、ということで生きていくのが難しかったりします。
自分では気が付かないところで他人を傷つけているかもしれません。人が人として生きていくためには、あるがままの自分を認めるとともに、他人をも自分と同じように認めていかなければなりません。つまり、普段の生活のなかで、いろいろな個性や違いを認め合うことが大切ではないでしょうか。
2003年という新たな年を迎え、これを機に今一度自分自身や自分のまわりを見つめ直し、一人ひとりの心を大切にした、人権が尊重される社会にしていきたいものです。