第87回 死期へ向かう道程-3

まつばらの民話をたずねて

松原の人々の一生

今月も死についての言い伝えなどを紹介します。例によって、俗信や生活習慣からくる非科学的や非文化的な行動など諸々の部分などふくめて、聞き取りした内容の中にはこんな事があったのかと笑える部分もあり、残念ながら笑えない部分もあり、人権上不適切な事項も多々あるかと思いますが、生活習慣風土が作った民俗のなせるわざとしてご理解下さいますようお願いいたします。

第87回 死期へ向かう道程-3

(1)人は自分の死期がわかるのか(通夜談話の事例)

 (昭和50代から60年代、通夜の席などで交わされた会話採集ノート参考より)

 主婦や高齢者が急に長患いの床についたあと、冥土へ旅立った時の通夜の席で、死者を偲び語る時、必ずと思えるほど暗黙の中でぼそぼそと交わされる会話がありました。大切な儀礼の場ですので、失言が許されないため自然の形で時代や世相に合わせて会話は無難に交わされますが、誰にも与えられた「死」への不安は、いつ、どのようにして自分の所へくるのか、その日は何かの形で分かるのだろうか。知りたい言葉を心の奥底に通夜の伽をします。

 事例は一般庶民の、自宅葬儀で行う私の体験した通夜での談話姿の一例です。

 まず、夜伽話(よとぎばなし)は死者の勤勉さ、性格の良さ、人間性に満ちたよき行動などを話した後、生きてほしかったことなど冥土へ行くには早すぎる事を、エピソードを交えて語りあいます。時間を見計らって、喪主に近い人がお茶をはこび、夜伽客の話へ入ってきます。「そういえば、生前は、かくかくしかじかであった」と思い出話をしながら、まわりの耳が当人の方へ集まった所で「今思い返しますと、病で床に着く前に、台所をあの体で、まァよくもここまできれいに磨き上げたかと感心するほど、ピカピカに磨き上げて、戸棚の中も日常の物と孫達の物をわけ、それにお客さん用と、それはまあ、分かりやすく丁寧に片付けてあったと(喪主さんが)言っていました」などと、きっちりとした故人の姿を称えます。

 それに対して通夜客の2、3人が「○○さんらしいことです」「足が痛いと言っていたのに○○さんなればこそ、ですわ」等、答えながら茶を飲み終えて、後へ控えている通夜客へ「どーぞ」と言って席を譲ります。この時、引き継ぐには夜伽(よとぎ)の時間がまだ短いと思う客は残ります。すると新しい通夜の客が、「今耳に入った話ですが私もそのような心がけを持って、生きていかなければとおもいました。いいお話を聞かしていただきました」等と言って、話をつなげて夜伽を続けている人達の中へ入り一緒に通夜の夜伽を務めます。こうしたなかで、この通夜の席や帰宅の道でお互いが聞きたいが、暗黙の了解で話題をさける話に何度か出会った話があります。「自分が死ぬ以前に、いつ冥土からむかえがくるのか事前に、わかるのだろうか」という事です。答えは色々ありましたが、私が信じたのは「分かると思う」でした。

 その時、事前に分かると話した人から教えてもらった考えは、人間は動物だからだそうです。ねこは飼い主の家で死なないそうです。歳をとり死の時が来ると飼い主の家から出ていき、いくら探しても絶対に姿を見せないそうです。しかし学問の分類とは別に一般生活者から見て、野良猫は別としてねずみを採らなくなった猫は動物の猫ではなく人間の飼い猫に分類される。人間は動物だけど、人間である事と同じで、動物としての五感や本能を失った人間の飼い猫ということになる。それゆえに、飼い主の家で死を迎える事に抵抗を感じないのではないか。現在、都会の飼い主のもとで生きている猫は死期がわからないだろう。だから人間が与えた猫の場所で死んで、孤独に一匹で死ぬ行動はとらなくなっている。と言う話になりました。人間も死へ対する畏怖や厳か(おごそか)なる気持ちが薄らいで、五感、動物本能の消失は当然であると結論した。ついては、松原は多くのカラスがいるにもかかわらず、私にはどのカラスもカアカアと同じ鳴き声に聞こえていました。絵画仲間Uさんは、カラスの鳴き声で人の死を感知できるので、その方法を教えてもらいました。しかし、カラスの鳴き声がカアカアだけでない分別はつきましたが、死の予兆や死者を感知する鳴き声の聞きわけはまだ出来ません。

(2)死を伝え、死者の家を教えるカラス

自宅開放し絵を描き語る仲間のUさん他

カラスは死者が出る三日前から鳴いて知らせる

 人が死ぬ時は、カラスがアーアーってなくわなぁ。その声でだいたい人が亡くなる日がわかるわなぁ。アーアーと鳴くのは三日前や。
 そこの藪(語り手宅の近くにある小高い丘)でカラスが鳴くと、ああ誰かが亡くなったのかって思うわなぁ。アーアーって鳴き始めて三日目やなぁ。

動物は本来、死ぬ時は群れや家族から離れて孤独に見守られずに死ぬ習性をもつ。動物は肉食だから、死を目前にした動物は格好の獲物であると共に子供達に教える獲物を捉える絶好の教材でもある。これはカラスだけでなく動物鳥類共に同じであろうと思う。そこで、人間も動物も高齢になると体から老臭が出るように、死の三日くらい前から死臭が出ているのではないだろうか。今思うに、古老の指示を思い返すと三日前くらいから人は死相がではじめている。死臭については、今の人間のもつ五感ではキャッチできないにすぎないと思われる。また死に装束に着替える時、古老が「体から臭いが出ないように丁寧に拭き、鼻、口、耳、肛門等穴をふさぐ指示が出る。死者の体は、冬は椿、春は菜の花、初夏は紫陽花と四季の花で覆う。これは死者を敬う儀礼と思っていたが土葬のなごり(野犬に死体を襲われないための臭い消し)であったのでないか。
(注意)以上の事からカラスは自分の群れに教えているのでないか。

カラスは死者の家を教える

 カラスは死者の家を背にして鳴きます。鳴いているカラスの尾の方を目で延長線を引くと、カラスが群れを成して騒いでいる所に当たる。その下に死者の家がある。死者の家や。御墓の上をでグルグル回る習性は、死者を狙った過去の習性が残っていると思われる。なお、Uさんによると墓をカラスが回るのは、人が葬られて七日(なのか)目だそうです。

 カラスが死者の家に尾を向けて鳴くのは、他の動物に気づかれないためと考える。

 カラスが、家の上やお墓で回る群行動は、私は出会っていません。

大阪府文化財愛護推進委員 加藤 孜子(あつこ)

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