ここ数年、空前の「猫ブーム」が続いていると言われています。メディアが取り上げるかわいい猫の特集に心を癒されている人もいると思います。
一方で、ご近所にいる「のら猫」が、子猫を産んで増えてしまい、庭にふん尿をしてしまったり、車のボンネットに乗ってしまったりして、地域の生活環境を損ねてしまう場合があります。
そのような地域の生活環境問題に対し、「のら猫だから仕方ない」と思わずに、人と猫がよい関係を築きながら、地域で取り組んでいく方法があります。
それが「地域猫活動」です。
地域猫活動とは
地域住民が主体となって、その地域にいるのら猫が増えないように不妊手術を行い、手術後の猫を地域で管理する活動のことです。
のら猫の寿命は平均4~5年と言われており、地域猫活動を続けることにより、殺処分によらない方法で、少しずつのら猫の数を減らすことができます。
地域猫活動の流れ
まずは、地域にいるのら猫を把握し、繁殖をおさえるため不妊手術を行います。
捕獲(Trap)→不妊手術(Neuter)→元の場所に戻す(Return)
この一連の流れを「TNR」といいます。
※TNRを行った猫は、目印として耳先をさくらの花びらのようにV字にカットすることから「さくらねこ」とも呼ばれます。
TNRの後、地域住民で手術後ののら猫の管理を行います。適切な管理を行うことで、猫の縄張り意識を利用して新たな猫の流入を防ぐことができ、また万一新たな猫が入ってきた場合にも、すぐに把握・対応できるようになります。具体的な管理方法の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 猫用トイレの設置によるふん尿被害対策
- 定時・定点の給餌による猫の頭数把握及び新たな猫の流入監視
- 近隣への地域猫活動の周知
地域猫活動のポイント
〇「置きエサ」をしない
エサを置きっぱなしにする「置きエサ」は、未手術の新たな猫の流入や、カラス等の他の動物を呼び寄せることにつながり、周辺の生活環境の悪化を招くのでやめましょう。
捕獲や管理のためにエサを与える場合は、「迷惑にならない場所で、毎日同じ時間に与え、食後すぐに片付けて清掃する」を徹底しましょう。
〇「地域住民主体」の活動にする
地域猫活動は、単なる動物愛護活動ではなく、地域の生活環境問題を解決するための手段です。
そのため、活動を成功させるには、地域の人たちみんなが活動の目的や活動内容を理解し、協力し合って進めていく「地域住民主体」の活動にすることが大切です。
近隣の人たちへの周知や広報をこまめに行い、活動に携わる人もそうでない人も、「地域の人たちみんなで見守る」活動にしていきましょう。
地域猫活動の効果
市内のある地域では、かつて47匹ののら猫がおり、ふん尿や鳴き声、ごみの散乱などの生活環境被害が発生していました。そこで、市内で活動するボランティア団体の支援のもと、のら猫への不妊手術が行われました。その後地域住民の中で「エサやりは時間と場所を決めて、すぐに片付ける」「地区内の各地で猫用トイレを設置する」などのルールを決めて地域猫活動が進められた結果、令和6年7月現在、16匹にまで減少し、生活環境被害も軽減されました。他にも町会全体で地域猫活動を進め、当初16匹いたのら猫を2匹にまで減らした地域もあります。
さらに、当初は3人の有志から始めた活動が、徐々に仲間を増やし、町会全体での地域猫活動になり、地域猫新聞の発行や、地域猫に関するイベント開催など、みんなで楽しみながら活動が続けられている地域もあります。
なお、市では交通事故等で亡くなったのら猫の引取り業務を行っており、かつては年間800頭以上の引取りがありましたが、下記のグラフのとおり、近年は3分の1程度にまで引取り頭数が減少しています。これはTNRや地域猫活動が各地で進められたことにより、新たに生まれる子猫や、のら猫自体の数が減っていることを示しているものと考えられます。
地域猫活動の支援
市では、地域の方々が地域猫活動に取り組みやすくなるよう、さまざまな支援を行っております。
〇「さくらねこ無料不妊手術事業」への参加
公益財団法人どうぶつ基金が不妊手術・ワクチン・ノミ駆除薬の費用を全額負担する「さくらねこ無料不妊手術事業(行政枠)」に令和元年8月から参加し、地域猫活動を行うボランティア団体等と連携してTNR事業を行っています。
「さくらねこ無料不妊手術事業」とは、飼い主のいない猫に対し「さくらねこ TNR(Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻す、その印として耳先をさくらの花びらのようにV字カットする)」を実施することで、繁殖を防止し、「地域の猫」「さくらねこ」として一代限りの命を全うさせ、飼い主のいない猫に関わる苦情や、殺処分の減少に寄与する活動です。当事業の活用により、令和6年3月末までに市内で1,444頭の野良猫に不妊手術が行われました。
無料不妊手術チケットの交付にあたっては一定の条件がありますので、詳細につきましては環境予防課までお問い合わせください。
〇物品の貸し出し
地域猫活動に必要な捕獲器や腕章等の貸出しをしています。詳細につきましては環境予防課までお問合せください。
〇普及啓発活動
令和6年度の活動
7月16日、天美西小学校3年生に向けて、大阪府動物愛護推進員の黒田 友恵さんによる「さくらねこ絵本」の読み聞かせ授業が開かれました。
黒田さんは本市とも連携しながら、市内で地域猫活動の普及促進に長年取り組まれている方で、絵本の読み聞かせとあわせて、猫の習性についての話や、ご自身の活動の様子などをわかりやすく語られました。子どもたちも「さくらねこを見かけたらそっと見守る」「さくら耳でない猫を見かけたら市に連絡する」と頼もしい答えを返してくれていました。
「さくらねこ絵本」は公益財団法人どうぶつ基金にて制作されたもので、今回、400部を市に寄贈いただきました。読み聞かせ授業は3年生だけの開催となりましたが、「さくらねこ絵本」は全校生徒に配布することができました。絵本を通じて、天美西小学校の子どもたちが地域の人たちや動物たちにやさしい気持ちを持って接してくれるよう願っております。
※さくらねこ絵本については、公益財団法人どうぶつ基金 啓発資料のページでダウンロードすることができます。
不幸な猫を増やさないために
〇猫を飼うときは、最後まで愛情と責任をもって飼いましょう
飼い主には、ペットをその命を終えるまで大切に飼う義務があります。決して、ペットを捨ててのら猫にしないでください。高齢や入院により万一飼えなくなった時のことなど、飼う前に一度じっくり考えましょう。
また、猫はできるだけ室内で飼いましょう。猫はそんなに広い空間でなくても、上下に運動できれば満足できますので、室内のみで飼うことが十分可能です。事故に遭う危険性が減るだけでなく、感染症の予防にも効果的です。子猫が産まれることを望まない場合や、産まれた子猫を全て幸せにできない場合は、不妊手術をしましょう。
〇のら猫にエサを与える前に考えてみましょう
他人の所有地でのエサやりやエサの放置などが、時には周辺の迷惑となり、猫が嫌われる原因にもなります。また、エサやり場に猫が集まり、集まった猫の間で子猫が産まれて、のら猫をさらに増やすことになります。
のら猫を増やさないためにもエサを与える前にもう一度よく考え、定時定点でのエサやり、トイレの設置などルールを守り、不妊手術を行うなど地域猫活動につなげるようにしましょう。
〇保護猫について
大阪府動物愛護管理センターや民間のボランティア団体では、さまざまな事情により保護された猫の譲渡を実施しております。
のら猫による被害でお困りの方へ
のら猫が庭や花壇に入り込み、荒らされたり、ふん尿をされて困っている人のために、自宅でできる自衛策を紹介します。
猫による被害でお困りの方へ(自宅でできる自衛策) (PDF 2.8MB)
参考リンク
動物愛護管理法及び大阪府動物愛護条例に基づく動物の適正飼養や終生飼養の指導・啓発など、大阪府の動物愛護行政を推進する拠点です。所有者のいない猫(のら猫)の対策支援や、保護猫の譲渡なども行われています。
人と猫との共生を考えるために(人と猫との共生を考えるハンドブック)
大阪府動物愛護管理センターにて作成・配布されているハンドブックです。猫の正しい飼い方、のら猫との付き合い方、地域猫活動等について、わかりやすく解説されています。
本市も参加している「さくらねこ無料不妊手術事業」をはじめ、さくらねこ・TNRについて、さまざまな普及啓発活動に取り組まれている団体です。