近代化遺産

更新日:2018年12月13日

はじめに

 近代化遺産とは、主として明治時代以降の技術によって造られた産業・交通・土木に関する構造物や建築のことです。具体的には江戸時代末期から概ね昭和20年(1945)までに建築された建造物が該当し、たとえば紡績工場などの工場建築物や官公庁舎・学校等の建築物、会社や商店の社屋、鉄道や道路の橋梁、港の灯台などがあげられます。これらのものの大半は、私たちの日常生活に非常に密接に関わって存在しており、多くのものは、歴史的な評価が定まらないまま、都市開発や技術革新によって失われつつあります。

 文化庁では、そういった失われつつある近代化遺産について、全国的に調査を進めており、その一端として、本市においても、市内に残る近代化遺産についての調査を行いました。

 本市においては、金網や真珠核、印材などが地場産業として栄えていることから、そういった産業の製造工場が、また古くから多くの街道が通る交通の要衝地としては、橋梁などの交通関連施設が、加えて本市には農地も多く残ることから、池樋などの水利施設などが、近代化遺産として現在も残っているのではないかと、当初予測されました。しかしながら、土地開発の著しい大都市近郊で、かつ大都市商業圏として競争の激しい経済環境にあっては、数十年前のものでもなかなか残っていないというのが現状でした。

 そういった状況の中で、なんとか見出せたのが、駅のプラットホームでした。本市には、近鉄南大阪線が通っており、河内松原駅、高見ノ里駅、布忍駅、河内天美駅の4駅が存在しています。そのうち河内松原駅と布忍駅は、開業当初から設置された駅で、位置も現在と変わっていません。どの駅も外見上ホームは新しく改築されていますが、実は現在のプラットホームの下には、昔のプラットホームが隠されていたのです。

近畿日本鉄道南大阪線の歴史

 近畿日本鉄道南大阪線の歴史は、平尾村(現堺市・旧美原町)の出水弥太郎氏が設立した河陽鉄道株式会社が、明治31年(1898)に柏原から古市間で開業したのに始まります。その後富田林まで路線を延ばしますが、明治32年(1899)に事業不振のため、河南鉄道株式会社に事業が引き継がれます。

 河南鉄道株式会社は、着々と路線を延長し、明治35年(1902)には河内長野まで至り、現在の近鉄長野線の祖形ができあがりました。

 河南鉄道は、大正8年(1919)には、大都市大阪に接続すべく、社名を大阪鉄道株式会社(いわゆる大鉄)と改称し、大正11年(1922)に道明寺~布忍間を開業しました。この時に設けられた駅が、布忍駅と河内松原駅、高鷲駅、藤井寺駅です。そして翌大正12年(1923)に大阪天王寺(現在のあべの橋駅)~布忍間を開業して、大阪都心部への接続を果たしました。河内天美駅は、このときに設置されたものです。またこのときには蒸気機関から電化への転換も果たしています。なお市内4駅のうち高見ノ里駅が設置されたのは、少し遅れて、昭和7年(1932)になります。

 大阪鉄道株式会社は、その後、橿原神宮前まで路線を延ばしますが、昭和18年(1943)に関西急行鉄道(関急)と合併します。関急は、明治43年(1910)に設立された奈良軌道株式会社が翌明治44年(1911)に大阪電気軌道株式会社(大軌)と改称し、さらに昭和16年(1941)に関西急行鉄道と改称したもので、大阪~奈良、三重方面へ手広く路線をもっていました。この関西急行鉄道が昭和19年(1944)に南海鉄道株式会社(現南海電鉄)と合併してできたのが、近畿日本鉄道株式会社です。
(なお昭和22年(1947)には、旧南海鉄道から継承した事業を再び南海鉄道(現南海電鉄)に戻しています。)

各駅の現状

 布忍駅と高見ノ里駅、河内天美駅では、現在のプラットホームの下に石垣で築造された旧ホームの面影を見ることができます。河内天美駅では、部分的にしか残っていませんでしたが、布忍駅と高見ノ里駅では、現在は使用されていないスロープの痕跡も現ホーム下にそのままの形で見て取ることができます。興味深いのは、布忍駅では石垣が四角い切り石積みなのに対し、高見ノ里駅と河内天美駅では、人頭大の丸い石が用いられていることでした。河内松原駅は、大幅に改修されていて、外見上は石積みなどはまったく見ることができませんが、少し覗き込むとわずかに石積みらしきものをを見ることができました。

 これらの石積みのプラットホームが築造された時期は、実際のところ、あまり明確ではありませんが、駅が設置されて以来、現在まで位置が移動していないことや、駅という性格から言っても、そう何回も一から造り直すことはないと思われますので、開業当初のものである可能性があります。

ご注意

各駅とも非常に多くの電車が往来しています。見学のために、プラットホームの下を覗き込んだり、線路内や踏み切りに近寄ったり、立ち入ったりすることは、たいへん危険ですので、おやめください。

河内天美駅・藤井寺方面のプラットホームの写真

河内天美駅・藤井寺方面のプラットホーム

布忍駅・藤井寺方面のプラットホームの写真
布忍駅・藤井寺方面のプラットホーム

布忍駅・藤井寺方面のプラットホーム

高見ノ里駅・藤井寺方面のプラットホーム

高見ノ里駅・藤井寺方面のプラットホーム

高見ノ里駅・藤井寺方面のプラットホームの写真
高見ノ里駅・あべの方面プラットホームの写真

高見ノ里駅・あべの方面プラットホーム

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