145 天美に息づく薦から注連縄へ

更新日:2018年12月13日
阿麻美許曽神社の画像
河内志の画像
 

『河内志』に記された丹北郡「土産」の薦
池内・城連寺二村の文字が見える。薦の前には、本郡(丹北郡)に産する麦の味が最好とある。
阿麻美許曽神社の鳥居と南門に架けられた注連縄

『河内志』に紹介された池内・城連寺村特産の薦

 大阪府は本年(平成21年)1月、府域全体を「博物館」、今ある資源を「展示品」や「館内催し」に見立て、それらを“まちの顔”として内外に発信する「大阪ミュージアム構想」を発表し、971件を登録しました。このうち、南河内地域では129件を数え、本市でも阿保神社(阿保)、我堂八幡宮(天美我堂)、柴籬神社(上田)、屯倉神社(三宅)、布忍神社(北新町)、大林寺(北新町)の各社寺と、大阪エコ農産物「まったら愛っ娘松原育ち」の6件が選ばれました。
 今回のミュージアム構想で、各地の特産品が登録されたことは特色のひとつです。大阪産として、羽曳野市のぶどうや太子町のみかんなどと共に、松原オリジナルブランドの大阪しろな・枝豆・ネギ・キャベツなども選定されたのです。市内の6戸の農家が取り組んでいる農薬を減らし、環境や身体に優しいこれらの野菜は、もよりの農産物直売所にも置かれていますので、市民の皆さんもなじみがおありでしょう。
 ところで、江戸時代以降、こうした松原オリジナルブランドの先駆けともなったものに、わらを編んだ薦が有名でした。享保20年(1735)、河内の歴史や名所旧跡及び特産物を紹介した『河内志』(並河誠所編)は市域にあたる丹北郡の「土産」として、薦が池内(現天美東)と城連寺(現天美北)の二村の名産であると記しています。薦はむしろとして敷物にしたり、被覆材で薦巻き・薦被りといって酒樽や火鉢あるいは松の木などに巻かれたりしました。
 薦は近世から近現代を通じて、コメの生産と関わり、稲わらの利用が生活と深く結びついていましたので、農家の重要な副業となりました。わらはどこでも見られましたが、宝永元年(1704)の大和川の付け替えで多くの田畑を奪われた天美地区で薦生産が盛んだったのです。
『河内志』には、同じく「土産」として丹北郡に産する麦は味が最好であるとも紹介しています。田畑に稲わらや麦わらを干した風景が目に浮かびます。
 今では薦や麦が特産であったことは忘れられ、わらも少なくなっていますが、城連寺では正月の注連縄づくりが現在も続けられています。昭和40年代の最盛期には城連寺だけでなく、油上(現天美西)や高木(現北新町)の人々は大阪市南部や堺方面の商店街に出向き、家庭だけでなく、会社や商店でも売ったそうです。
 また、各神社などにしめられる注連縄にも奉仕しました。とくに、平成に入っても十日戎で有名な今宮戎神社(浪速区)の本殿や注連石を飾ったり、あるいは大阪市阿倍野斎場(南霊園)に林立する墓石の前に竹を設けて架けられる夫婦縄と称する注連縄は多くの人々に親しまれました。
 城連寺や池内など天美地区の氏神である阿麻美許曽神社に毎年つけられる注連縄も、城連寺の氏子さんによってつくられています。天美の伝統工芸である注連縄づくりは、江戸時代の特産物薦を受けつぐ技ともいえるでしょう。

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