オープンした三宅東公園（三宅東4丁目） 西側から撮影。後方は松原高校。
「三宅町土地改良区営 東地区南圃場整備事業 竣工之碑」（三宅東4丁目）東側から撮影。
発掘された奈良時代の掘立柱建物の柵列跡（市教育委員会提供）
下は西側から撮影。道をはさんだ建物は府立松原高校（三宅東3丁目）。上は南側から撮影。
三宅東公園に生まれ変わった奈良時代建物群と近世ため池
府立松原高校（三宅東）の西側で、三宅東公園の北側一部が七月に開園しました。この公園は、「スポーツのまち松原」をめざす市が天然芝や人工芝のある多目的広場をつくり、子どもから元希者（高齢者）まで、幅広くスポーツが楽しめるエリアとしたものです。早速、多くの人々がグラウンドで汗をながしています。
多目的広場の東隣りには、健康遊具が備えられ、また、休憩用のあづまやもつくられ、市民の憩いの場ともなっています。次年度には、南区域も完成する予定です。
ところで、この場所は昭和二十年代まで、十郎ヶ池（じゅうろうがいけ）という三宅地区の灌漑池でした。三宅では、江戸時代初期の慶長五年（一六〇〇）、広大な大海池（おおがいいけ）（「歴史ウォーク」90）が掘られました。しかし、その後も農業生産の増加とともに、ため池が必要となり、大海池の下の北側に十郎ヶ池・菰池（こもいけ）や、西北側に酒蓋池（さけぶたいけ）、西側に馬場池（ばばいけ）もつくられました。
このうち、十郎ヶ池は、宝暦十年（一七六〇）九月の「三宅村明細帳」に、「長八拾間（けん）、横七拾八間四尺七寸」と記されています。また、「飛嘉恵（ひかえ）」と記す弘化三年（一八四六）以後に書かれた三宅村の史料によると、十郎ヶ池は元禄年間（一六八八～一七〇三）以前に掘られていましたが、土砂の埋積がひどかったので、元禄十二年（一六九七）、池の南に屯倉神社（三宅中）の御供田（ごくでん）をつくりました。氏神に供える米などを生産する新田（しんでん）、つまり十郎ヶ池新開（しんかい）が開拓されたとあります。大海池の北側に「神楽田（かぐらでん）」の小字（こあざ）名が残っています。
さらに、もっとさかのぼると、ここでは十郎ヶ池が掘られる九五〇年ほど前の奈良時代から、近世に至る遺構や遺物が市教育委員会の調査で、次のように見つかっています。松原高校を含む土地の小字を「蔵重」とよんでいますので、蔵重遺跡と命名しています。
（一） 奈良時代の掘立柱（ほったてばしら）建物を囲む柵や溝、軒丸瓦（のきまるがわら）、軒平瓦（のきひらがわら）、丸瓦（まるがわら）、平瓦、土師器（はじき）・須恵器（すえき）の坏（つき）や皿
（二） 中近世の井戸
（三） 近世初頭に築造された十郎ヶ池の一部
見つかった埋蔵文化財は、ここだけではありません。今、三宅東公園出入口に西接して、「竣工之碑」（平成十四年六月）と刻まれた立派な石碑が建っています。公園の西側は整然と区画された一面の田畑ですが、これは地元の三宅町土地改良区が東地区南圃場（ほじょう）整備事業として行ったものです。
この時の教育委員会の予備調査でも、奈良時代の掘立柱建物群と溝跡などが検出し、土師器坏・皿・甕、須恵器・壺、円面硯（えんめんけん）（円形の硯（すずり））、軒平瓦などが出土しました。
これらの掘立柱建物跡や溝跡は、規模も大きく、また、一般農民が使用できない瓦葺きであること、その上、役人あるいは氏族が用いたと思われる円面硯が発見されていることから、ここには役所があったかもしれません。奈良時代、同地は丹比（たじひ）郡三宅郷（ごう）でしたので、今の市町村庁舎、つまり三宅村役場とでもいえるでしょうか。
研究者のなかには、奈良時代の正倉院に伝わる文書に、三宅郷に上道（かみつみち）氏という有力者が居住していたとありますので、この氏族の居館（きょかん）（屋敷）と見る考えも提示されています。蔵重遺跡の現三宅東公園に隣接する西側から見つかり、時代的にも同じ性格のものと思われますので、蔵重西遺跡と名づけられています。
なお、三宅東公園に生まれ変わった十郎ヶ池のすぐ西、東地区南圃場整備事業にとりこまれた菰池は、埋めたてられてフェンスで保護されています。また、屯倉神社前の馬場池は三宅町土地改良区やJAが建ち、酒蓋池も三西町会児童公園西側の工場となるなど、いずれも埋めたてられましたが、古代から脈々とつながる三宅の歴史の中で、現代の生活に生かされているのです。