204 天美小学校と二宮金次郎像

更新日:2018年12月13日
二宮金次郎像の写真

二宮金次郎像(天美東8丁目・天美小学校)

台石に「昭和十三年七月 関本源三郎建之」とある。保田紀元氏撮影。

吉井宝樹・提樹の墓

本堂裏にあり、右端が宝樹(文久2年・1862年4月27日没、39歳)・提樹(大正7年11月29日没、66歳)の墓。

忠魂碑の写真

忠魂碑(昭和12年5月)

昭和27年10月16日、小学校隣地から、現在地に移し、玉垣などが再建された。恵我小学校横にも「忠魂碑」があり、井上が昭和12年12月に書いたものである。

吉井宝樹・提樹が学んだ経本などの写真

吉井宝樹・提樹が学んだ経本など(敬恩寺蔵) 右端が宝樹・提樹名の『和歌序弁巻』。

吉井提樹の写真

吉井提樹(天美東8丁目・敬恩寺蔵)

初代校長・敬恩寺吉井提樹と「修身」忠君愛国の金次郎

 今月(六月)九日は、天美小学校が明治六年(一八七三)に創立されてから一四一年になります。市内では、布忍小学校と並んで最古の小学校です。開校当時、城連寺村(天美北)・最勝寺住職の桑原大恵、池内村(天美東)・敬恩寺住職の吉井提樹、芝村(天美西)・安楽寺住職の砂本先照の三人が教鞭をとりました(「歴史ウォーク」194・203)。

 校舎は敬恩寺を利用してスタートし、池内小学校となった後、やがて移転して天美尋常小学校と改称しました。明治二九年(一八九六)には現在地に新築移転し、明治三四年(一九〇一)に吉井提樹が初代校長となりました。提樹は自坊を提供し、明治七年(一八七四)から同三七年(一九〇四)の長きにわたって奉職したのでした。

 提樹は浄土真宗本願寺派の僧として多くの経本のほか、教育などに関わる蔵書や著述を残しています。曽孫の吉井章住職に多くの資料を見せていただきましたが、それらは父宝樹の影響も強くあったようです。

 193・194号で紹介したように、江戸時代末期、最勝寺住職の恵学は九州・日田(大分県)の私塾である咸宜園の広瀬淡窓に学び、儒学や漢詩の素養を身につけました。恵学は近隣の住職の子弟にもその教えを学んでもらおうと、淡窓の弟の広瀬旭荘が堺にも開いていた咸宜園に彼らを入塾させたのでした。まず息子の大恵を紹介し(天保七・一八三六年七月十日入門、十五歳)、大恵は長じて教員となったのです。

 さらに、恵学は同月二六日、阿保村の安養寺・大芸(十八歳)、三宅村の願久寺・静雄(十八歳)、三宅村の善長寺・大成(十八歳)も入門させました。翌天保八年(一八三七)一月十八日には、提樹の父である宝樹が十四歳で、同月二六日に高木村(北新町)の円成寺・諦秀が二十一歳でそれぞれ入門しています。

 提樹の旺盛な知識は咸宜園に学んだ宝樹から受け継がれたものでしょう。宝樹が学び、提樹も引き継いだ寺蔵の『和歌序弁巻上下』と記した写しには、二人の署名が記されています。

 ところで、天美小学校校庭に二宮金次郎(尊徳)の像が建っています。金次郎像は、大正末期から昭和前期にかけて、全国小学校の校庭に次々に設置されていきました。わが国が第一次世界大戦を経て、満州事変や日中戦争へとつき進み、学校現場も軍事色に染まり、「修身」忠君愛国に傾斜していった時代です。

 金次郎は江戸後期、小田原(神奈川県)で生まれた農政家として有名です。草鞋をはき、薪を背負って本を読みながら歩く子どもの金次郎は、その勤勉さと親孝行ぶりが讃えられました。子どもたちは、「修身」教科書にある「よく学びよく遊べ」「友達は助けあえ」「親を大切にせよ」という教えを、歴史上の人物を教材にして学習したのです。

 天美小学校の金次郎像は、昭和十三年(一九三八)七月に、天美村我堂(天美我堂)の関本源三郎が寄贈したものです。今は校庭裏門側に移されていますが、もともとは正門を入って南側にある校長室の前庭に建てられていました。戦前に設置された金次郎像は、市内の他校でもあったのですが、戦後は撤去されたり、新しく作り直されたりして、当時のものは同校だけです。

 今年度から使用される小学校一・二年生の新しい教材である『わたしたちの道徳』では、二宮金次郎があらためて取り上げられています。金次郎が再びクローズアップされているのです。

 なお、金次郎像の校庭外南側には「忠魂碑」が見られます。金次郎像建立の一年前の昭和十二年(一九三七)五月に建てられました。「皇紀二千五百九十七年五月建之 帝国在郷軍人会天美村分会」とあり、表の「忠魂碑」の書は陸軍大将の井上幾太郎です。井上は、在郷軍人会の会長を勤めていました。

 二つの像や碑は、小学生が学ぶ身近な地域学習の教材としても存在しているのです。

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